米・音楽業界の重鎮、クインシー・ジョーンズが91歳で死去

Quincy Jones『The Great Wide World Of Quincy Jones』（Mercury：1959）
商品情報　Amazon Music・MP3（JAN 01 1959）¥1,500

マイケル・ジャクソンの「スリラー」や、オールスター参加の「ウィ・アー・ザ・ワールド」をはじめ、ジャズ、ポップス、ヒップホップなど様々なジャンルで70年以上にわたり活躍した伝説のプロデューサー／作曲家／編曲家／マルチプレイヤーのクインシー・ジョーンズ（Quincy Jones）が11月3日、ロサンゼルスの自宅にて91歳で死去しました。

家族が訃報を伝えていますが、死因は発表されていません。

ジョーンズは1933年にイリノイ州シカゴで生まれ、幼少期からピアノを習い、家族とシアトルに移住した後、トランペットを演奏し始めました。ボストンのバークリー音楽大学を1 年で中退し、ジャズ・バンドのリーダー、ライオネル・ハンプトンとツアーを行ない、ニューヨークに移った後、レイ・チャールズ、サラ・ヴォーン、カウント・ベイシー、デューク・エリントン、エラ・フィッツジェラルドらの編曲家になりました。

1956年にバンドリーダーとして初アルバム『This Is How I Feel About Jazz』をリリースしたジョーンズは、1962年の『Big Band Bossa Nova』や、1971年の『Smackwater Jack』などでさらに名声を博し、1973年の『You’ve Got It Bad Girl』、1974年の『Body Heat』、1981年の『The Dude』などのソロ作品では、ジャズやビッグバンド以外のジャンルも探求しました。1989年の最高傑作『Back on the Block』は、当時流行していたヒップホップスタイルを含め、あらゆる感性を融合した作品で、同作は「年間最優秀アルバム賞」を含むグラミー賞を7回受賞しました。

また、60年代からプロデューサーとしても活躍し、1963年に手掛けたレスリー・ゴーアの「It’s My Party」（邦題「涙のバースデイ・パーティー」）がビルボード・チャートの第1位に輝き、フランク・シナトラやアレサ・フランクリンらの楽曲もプロデュースしていました。

1985年には、スティーヴィー・ワンダー、ティナ・ターナー、ボブ・ディラン、ポール・サイモンをはじめとする45人以上の一流ミュージシャンを集め、非営利団体「USA for Africa」のためにシングル『We Are the World』（1月10日MLCニュース）をレコーディングし、マイケル・ジャクソンとライオネル・リッチーが書いたこの曲は、アフリカの人道支援のために7500万ドルを集め、「最優秀楽曲賞」と「最優秀レコード賞」を含む3つのグラミー賞を受賞しました。ジョーンズは、生涯においてグラミー賞を28回受賞しています。

なお、映画やTV業界でも画期的な存在だったジョーンズは、1967年の映画『Banning』（邦題『夜の誘惑』）のサントラ「The Eyes of Love」でアカデミー賞の「オリジナル歌曲賞」にノミネートされ、映画音楽の作曲家として、1967年の『In the Heat of the Night』（邦題『夜の大捜査線』）や、1969年の『The Italian Job』（邦題『ミニミニ大作戦』）、1985年の『The Color Purple』に印象的な音楽を提供したほか、シドニー・ルメット監督1978年のミュージカル映画『The Wiz』では音楽監督も務めました。この作品で主演のマイケル・ジャクソンと知り合ったジョーンズは、マイケル1979年のアルバム『Off The Wall』、1982年の『Thriller』、1987年の『Bad』の3作でプロデューサーを担当しています。

ジョーンズは数々の栄誉を受けており、1992年に「グラミー・レジェンド賞」、2001年に「ジョン・F・ケネディ・センター名誉賞」、2011年にオバマ大統領から国家芸術勲章を授与され、2013年には「アーメット・アーティガン賞」を受賞し、「ロックの殿堂」入りを果たしました。

2016年には、トニー賞を受賞した舞台版『カラー・パープル』のプロデューサーとして、EGOT（エミー賞、グラミー賞、オスカー賞、トニー賞の頭文字に由来し、全4賞を獲得した人物に与えられる称号）の栄誉に輝き、2018年にジョーンズのドキュメンタリー『Quincy』が公開されています（2018年8月2日MLCニュース）。

安らかなる眠りをお祈りいたします。