【追悼企画】『志村けんが愛したブラック・ミュージック』レコード評原稿・再掲載【連載第5回・チャカ・カーン】+次回特別企画予告

写真提供:イザワオフィス

「【追悼企画】『志村けんが愛したブラック・ミュージック』レコード評原稿・再掲載」は今回で第5回めで、全10回のうちの折り返しとなります。みなさまからのリクエストで最も多かったのは前回のエアプレイでしたが、その次に多かったのが今回のチャカ・カーンでした。
 

この連載は、70〜80年代にかつて弊社が刊行した音楽&カルチャー雑誌『jam』に掲載された、志村けんさんがお書きになったレコード評原稿を再掲載しています。それぞれは短い原稿ですが、ただ褒め上げるばかりでなく、指摘すべきところは指摘。それでいて読み手に不快感を与えないのは、そのアーティスト/作品に対する愛情がちゃんと感じられるからではないでしょうか。

本日は再掲載連載の第5回。みなさんからの「読んでみたい!」というリクエストがエアプレイに次いで多かった、チャカ・カーンの『ノーティ』評原稿です。


【音楽雑誌『jam』】
『jam』は、1978〜1981年に弊社が刊行した音楽を中心としたカルチャー雑誌です。『ミュージック・ライフ』『ロック・ショウ』と編集長を歴任した水上はる子氏が立ち上げ、最後まで編集顧問として関わっていました。ティーンを主な対象読者としたそれら2誌に対し、もう一段階上の年齢層、言わば “その2誌を卒業した読者” に向けたものでした。

【『jam』1980年7月号】
今回の原稿が掲載されたのは『jam』1980年7月号(この号の編集長は高橋まゆみ氏)、表紙はプリテンダーズのクリッシー・ハインド。巻頭は女性リード・ヴォーカリスト特集、そのトップに福田一郎氏によるインタヴューが掲載されています。同特集、その後に続くのはデボラ・ハリー(ブロンディ)、アン・レノックス(当時ザ・ツーリスト、後にユーリズミックス)、ニナ・ハーゲン、パティ・スミス、ポーリーン・ブラック(ザ・セレクター)、スージー・スー(スージー&ザ・バンシーズ)ら。日本のグループでプラスチックス、シーナ&ザ・ロケッツも。いかにも1980年らしい顔ぶれです。以下、表紙/目次でこの雑誌や当時の雰囲気を思い出しつつ、志村さんの原稿をお読みください(タップ/クリックで拡大できます)。

『jam』1980年7月号
同号目次

◾️同号アルバム評ページ、その他の掲載作品(※掲載順、太字は志村けんさん執筆分)
ディーヴォ『欲望心理学』、イエロー・マジック・オーケストラ『増殖』、ザ・ビーチ・ボーイズ『キーピン・ザ・サマー』、ザ・モーターズ『テナメント・ステップス』、チャカ・カーン『ノーティ(じゃじゃ馬馴らし)』、ポール・マッカートニー『ポール・マッカートニーII』、フラッシュ&ザ・パン『ブラック・スクリーン』、ハーマン・ブルード&ヒズ・ワイルド・ロマンス『ゴー・ナッツ』、エリック・クラプトン『ジャスト・ワン・ナイト/ライヴ・アット武道館』、シャネルズ『Mr. ブラック』、スティッフ・リトル・フィンガーズ『ノーバディーズ・ヒーローズ』、ルー・リード『都会育ち』、ブッカー・T・ジョーンズ『ベスト・オブ・ユー』、ジョニー・ルイス&チャー『トライスクル』、トニー・シュート『アイランド・ナイト』、ランディ・クロフォード『道標(みちしるべ)』、ブラッフォード『ブラッフォード・ライヴ』、カジノ・ミュージック『ジャングル・ラヴ』、リジー・メルシエ・デクルー『プレス・カラー』、テレンス・ボイラン『スージーに贈る』、テリー・デサリオ『ムーンライト・マッドネス』、ザ・サイケデリック・ファーズ『ザ・サイケデリック・ファーズ』、南 佳孝『モンタージュ』、レイチェル・スウィート『汚れなき憧れ』、ポール・デイヴィス『パステル・メッセージ』、Various Artists『シャープ・カッツ』

◾️執筆陣(掲載順)
近田春夫、高橋まゆみ(本誌編集長)、志村けん、ピーター・バラカン、中村とうよう、かまやつひろし、湯川れい子、木崎義二、江口寿史、仲邨沓一、藤 吉郎

【プロフィール】志村けん(しむらけん)

東京都東村山市出身のコメディアン。1950年2月20日生まれ、A型。荒井 注脱退に伴いザ・ドリフターズに加入、間も無く『8時だヨ!全員集合』で「東村山音頭」「ヒゲダンス」などでお茶の間の人気は絶頂に。その後も「バカ殿様」「変なおじさん」といったキャラクターを生み出した。テレビでは『天才!志村どうぶつ園』にレギュラー出演していたが、2020年3月29日、新型コロナウイルスによる肺炎で他界された。享年70。

音楽、特にブラック・ミュージック、ディスコ・ミュージック好きとして当時から広く知られていたことから、弊社『jam』でアルバム評を執筆することに。「ヒゲダンス」のトラックはテディ・ペンダーグラス、「ドリフの早口言葉」はシュガーヒル・ギャング+ウィルソン・ピケットで、いずれも自身によるセレクトであるというエピソードが知られている。また中学時代は熱烈なビートルズ・ファンで、1966年の武道館公演を見に行った逸話を披露したりもしていた。


【追悼企画】志村けんがライターとして執筆した、80年代ブラック・ミュージックのアルバム解説原稿再掲載

【第5回・チャカ・カーン『ノーティ(じゃじゃ馬馴らし)』】

Chaka Khan ‎/ Naughty

US:Chaka Khan ‎/ Naughty  1980年発売
(Warner Bros. Records/BSK 3385)

日本:チャカ・カーン『ノーティ(じゃじゃ馬馴らし)』1980年4月発売
(ワーナーパイオニア/
P-10821W

Side A
1. Clouds/クラウド(4:26)
2. Get Ready, Get Set/ゲット・レディ(3:41)
3. Move Me No Mountain/ムーヴ・ミー・ノー・マウンテン(4:14)
4. Nothing's Gonna Take You Away/ふたりは永遠に(3:42)
5. So Naughty/ソー・ノーティ(3:57)
 
Side B
6. Too Much Love/トゥー・マッチ・ラヴ(3:53)
7. All Night's All Right/オールナイト・オールライト(4:24)
8. What You Did/あなたの仕打ち(3:57)
9. Papillon (AKA Hot Butterfly) /ホット・バタフライ(4:08)
10. Our Love's In Danger/危険な関係(3:35)


ダイナミックなヴォーカルが堪能できる


 

チャカ・カーン『ノーティ(じゃじゃ馬馴らし)』ワーナー(P-10821W)
 

チャカのダイナミックなヴォイスと共に、A、B面十分に堪能できるアルバムだ。特にB面の出来がすばらしい。バック・ミュージシャンにジョージ・ベンソン等が参加しているだけあってノリはチョモランマ※1である。高音の張りのあるヴォイスはチャカのセクシー度をうかがい知ることができる。羨ましいくらいの感性の持ち主だ。バックと歌が一種のシンメトリーになっていて、絵画でいうならば実に構図のよい、曲ばかりが揃えられている。だからアップもスローも落ち着いて聴くことができる。B面の「トゥー・マッチ・ラブ」「オールナイト・オールライト」はアップのそれであり、チャカのヴォイスの魅力はドナ・サマーと双璧を成すものだろう。またA面の4、5曲目のスロー・ナンバー2部作は実に華麗に歌い上げている。こう書いてきたら何年か前に東京音楽祭のステージで見たチャカの姿がほうふつと甦ってきたのだ。
(志村けん)

※1:原文には「チョモランマ」に傍点があります。
※2:一部誤字、ふりがなを修正しました。

商品情報
チャカ・カーン
『Naughty』

MP3(1979/12/31)¥1,500
Recorded and Mixed at Atlantic Studios, New York by Lew Hahn
Mastered at Sterling Sound by George Marino
Engineer [Assistant] – Michael O'Reilly
Pressed By – Capitol Records Pressing Plant, Winchester
 
Producer, Arranged By [Horns, Strings] – Arif Mardin
Photography – Glen Wexler

Concertmaster – Gene Orloff
 
Backing Vocals – Chaka Khan, Charlotte Crossley, Cissy Houston, Whitney Houston, Luther Vandross, Ullanda McCullough
Guitar, Backing Vocals – Hamish Stuart
Guitar – Steve Khan
Guitar, Soloist – Hiram Bullock, Phil Upchurch
Guitar, Sitar, Soloist – Jeff Mironov
Bass – Anthony Jackson, Willie Weeks, Marcus Miller
Bass, Backing Vocals – Mark Stevens
Drums – Steve Ferrone
Percussion – Sammy Figueroa, Nana Vasconcelos
Percussion, Clavinet, Electric Piano – Arthur Jenkins
Electric Piano, Piano, Synthesizer – Leon Pendarvis
Electric Piano, Piano – Don Grolnick
Synthesizer – Ken Bichel, Richard Tee
Alto Saxophone – David Tofani
Alto Saxophone, Soloist [Alto Fill] , Tenor Saxophone – Eddie Daniels
Alto Saxophone, Tenor Saxophone – Harvey Estrin
Tenor Saxophone – Michael Brecker
Baritone Saxophone – Lewis Delgatto, Ronnie Cuber
Trombone – Barry Rogers, James Pugh
Trumpet – Randy Brecker, Marvin Stamm
French Horn – John Trevor Clark, Peter Gordon
Tuba – Robert Stewart, David Bargeron, Howard Johnson, Joseph Daley
Harmonica, Soloist – Hugh McCracken
Violin [Electric] – Noel Pointer
 
Strings – Alan Shulman, Al Brown, Anahid Ajemian, Frederick Zlotkin, Frederick Buldrini, Gerald Tarack, Harold Kohon, Harry Lookofsky, Homer Mensch, Jonathon Abramowitz, Kermit Moore, Leo Kahn, Lewis Eley, Marilyn Wright, Matthew Raimindi, Mitsue Takayama, Paul Gershman, Peter Dimitriades, Richard Maximoff, Ted Hoyle

【プロフィール】チャカ・カーン(Chaka Khan)
 

チャカ・カーン(発音はシャカ・カーン)はアメリカ、イリノイ州出身。11歳で初めてのヴォーカル・ユニットを結成し、1973年に人種混合ファンク・バンド=ルーファスのヴォーカリストとしてデビュー(ルーファスは1982年に解散)。そして1978年、アリフ・マーディンのプロデュースによりアルバム『恋するチャカ』でソロ・デビュー。デビュー曲「アイム・エヴリ・ウーマン」は後にホイットニー・ヒューストンがカヴァーしたことでも有名。ちなみにホイットニーはバッキング・ヴォーカルで『ノーティ』にも参加している(当時16歳)。

『ノーティ』は1980年リリース、彼女にとってソロとして2枚目のアルバム。裏ジャケの女の子は実の娘ミリニ。ビルボードでの最高位はブラック・アルバム・チャートで6位、全米チャートでは48位。また本作からは「クラウド」「ゲット・レディ、ゲット・セット」「ホット・バタフライ」の3曲がシングル・カットされ、それぞれR&Bチャートでヒットを記録。

 

1984年、プリンスのカヴァー「アイ・フィール・フォー・ユー」が全米3位の大ヒット。1989年、クインシー・ジョーンズがプロデュースしたレイ・チャールズとのデュエット曲「アイル・ビー・グッド・トゥ・ユー」でグラミー賞 “ベストR&Bパフォーマンス” を受賞、また1992年のアルバム『ザ・ウーマン・アイ・アム』でもグラミー賞 ”ベストR&Bヴォーカル・パフォーマンス“ を受賞。2002年、映画『永遠のモータウン』に提供したマーヴィン・ゲイのカヴァー「ワッツ・ゴーイン・オン」で2003年に通算8回目のグラミー賞 “R&B トラディショナル・ヴォーカル・パフォーマンス” 賞を受賞。この他グラミー以外にも、その受賞歴には枚挙に暇がない。

2004年にはジャズ・スタンダード集『クラシカーン』を発売、2007年には『ファンク・ディス』をジャム&ルイスのプロデュースでリリース。その後デジタルでのライヴ音源発売などを挟みつつ、目下の最新オリジナル作は2019年の『Hello Happiness』。さらに今年3月『Homecoming』と題して、昨年9月シカゴでのライヴ盤をリリースしたところ。この他、2003年には自叙伝『Chaka! Through the Fire』を上梓。また企業家としてチャカ・カーン・エンタープライズを家族と共に運営している。
 

ソニー・ミュージックエンタテインメント/アーティスト・ページより抜粋、追記して構成。

前回のエアプレイに対し、チャカはこの時の志村さんにはど真ん中だったようです。今後本連載で掲載していくリクエストの多かったものも、ソウル/R&Bのアーティスト/作品でほぼ同じ傾向。ですが、ソウル愛が溢れるあまり、時に厳しい言葉もあったりしますので、そういうところも引き続きどうぞお楽しみに。

……なのですが、次回は特別企画!『jam』に掲載された「志村けんインタヴュー」を掲載します。「ブラック・ミュージック好き」というのは当時あくまで横顔なわけで、テレビで見せるコメディアンとしての仕事に、それがどう影響を与えているのか。少年時代の話から、ドリフの付き人としての裏話まで。どうぞお楽しみに!


次回:1980年 志村けんインタヴュー 7月10日(金)正午公開!

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