【MLCプレイリスト】テーマ別に往年の名曲を集めて聴く連載企画・第10回

初の一般投稿。書籍『ヒプノシス ロック名盤デザイン秘話』発売記念、テーマはヒプノシス10選、題して「芸術こそ我が命」!

テーマ別に往年の名曲を集めて聴く新企画──名付けて【MLCプレイリスト】! アーティストの来日やリリース、また季節や記念日、さらにその時々のトピック的な内容をテーマに取り上げます。

第10回目となる今回は、初の一般投稿! 投稿者があげてくださったテーマは「ヒプノシス」──ならばせっかくなのでと、10月に弊社より刊行した書籍『ヒプノシス ロック名盤デザイン秘話』発売記念ということでお送りいたします。題して「芸術こそ我が命」。ヒプノシスは数々の名アートワークを手がけてきたデザイン・チームということで、いつもよりジャケット画像を大きめにしてお送りいたします。ぜひ『ヒプノシス ロック名盤デザイン秘話』をお読みになりながら今回のプレイリストをお聴きください。なお同書は2,000部限定ですので、お求めの方はお急ぎを。
ちょうど芸術の秋、という事で安直に思いついたプレイリストです。
 
一般投稿:松田伸治

ヒプノシスといえばロジャー・ディーンと並んで’70年代ロックを彩った二代巨頭。その歴史を語るにはもっと詳しい方が沢山いらっしゃると思われます。更に最近になってオーブリー・パウエルによる新たな回想録が出たばかり。そもそも数年前にSpotifyを始めた頃にヒプノシスの作品集を読みまして、「かねてから思ったけど、本は多々出ているがコンピレーションは聴いた事がないな」と思ってその本を片手に色々探したら(当時は)結構マイナーなアルバムも配信されていたので面白くなりまして(結構有名なアルバムが配信されてなかったりするのですが)。気がつけば全曲を聴くのに半日以上かかるプレイリストが出来ました。流石にこれは普通に聴くには長すぎるので、今回10曲をセレクトしました。

基準は元の本にオーブリー・パウエル(以下ポー)の思い出話が書かれているもの、尚且つ牛とプリズムと燃える男はオミット。もしかしたら別のプレイリストが可能なので、ヒプノシスの非公式サイトにて本家や解散後の主要スタッフの仕事をまとめているのでご参考に。

MLCプレイリスト 2022.12.15/芸術こそ我が命

1. Pink Floyd “Let There Be More Light”
2. Humble Pie “The Sad Bag of Shaky Jake”
3. Syd Barrett “Terrapin”
4. ELO “10538 Overture”
5. T.Rex “Jeepster”
6. John Williams “Cavatina”(Theme from "The Deer Hunter")
7. The Pretty Things “
Singapore Silk Torpedo
8. UFO “Doctor Doctor”
9. Peter Gabriel “Solsbury Hill”
10. Led Zeppelin “Achilles Last Stand”

■楽曲解説

1. Pink Floyd “Let There Be More Light”(1968)

ピンク・フロイド「光を求めて」

それまでにもいくつかの作品を手がけていたものの、ヒプノシスの活動が本格化したのはピンク・フロイドの二枚目『神秘』のジャケットデザインを依頼されたところから始まる。当時ヒップだった要素をコラージュしたジャケット画(その素材には「ドクター・ストレンジ」の一コマも!)は見事に音楽と合致した事から以後のフロイドのアルバム(そしてハーヴェストレーベルから出た様々なバンドの)の仕事を多く手がけるきっかけとなった。牛で衝撃を与えたのはその2年後、以降壁関連の作品を除いてほとんどのアルバムを手がける事実上の5人目のメンバーとなった。
英詞Google翻訳

2. Humble Pie “The Sad Bag of Shaky Jake”(1969)

ハンブル・パイ「シェイキー・ジェイクの悲しい物語」

こんなシンプルなポートレートも(特に初期には)少なくない。とはいえ本作はタイトル『タウン・アンド・カントリー』に引っ掛けて表には町暮らしの二人しか映っていない(残りの二人は田舎で撮った裏ジャケに)。ポートレート系でいうとデビュー直後のオリビア・ニュートン・ジョンを手がけていたりしているのですが(当時ヒプノシスで働いていた)ミック・ロックが撮ったロリー・ギャラガーのファースト・ソロは隠れた傑作(ちゃんと音楽に沿っているのに注目)。
英詞Google翻訳
商品情報
ハンブル・パイ
『タウン・アンド・カントリー』

Amazon Music・MP3(APR 21 2009)1,600

3. Syd Barrett “Terrapin”(1970)

シド・バレット「亀に捧ぐ詩」

そもそも “HIPGNOSIS” という名前はシド・バレットが当時住んでいたアパートの部屋のドアに書きつけた言葉に由来する。ストーム・トーガソンとミック・ロックが本作『帽子が笑う…不気味に』の撮影の為にシドの住む部屋を訪れた際にシドは部屋の床をオレンジと青で塗ってしまった。ポーによれば(ありとあらゆるプレッシャーで潰れてしまった)シドの精神状態を象徴したジャケット。
商品情報
シド・バレット
『幽幻の世界(帽子が笑う…不気味に)』

Amazon Music・MP3(JAN 03 1970)¥1,800(Deluxe Version)
CD(2020/9/18)¥2,307(完全生産限定盤・紙ジャケット仕様)

4. ELO “10538 Overture”(1971)

エレクトリック・ライト・オーケストラ「10538序曲」

ポー自身安直だと認めるこのジャケット、端的に言うとバンドのマネージャーのドン・アーデンがケチでジャケットに金を掛けなかったことでこうなったという。ポーが丁度手に入れたインゴ・マウアーの電球をとある所で撮影。見開きでも各曲に合わせて写真を選ぶなどの仕事をしたものの、ポー曰く撮影の総費用よりマウアーの電球の方が高かったそうである。
英詞Google翻訳
商品情報
Electric Light Orchestra
『Electric Light Orchestra』

Amazon Music・MP3(MAR 12 2012)¥1,500[40th Anniversary Edition]

5. T. Rex “Jeepster”(1971)

T・レックス「ジープスター」

少々意外なタイトルですがこの『電気の武者』もヒプノシスの仕事。敢えて一番有名な曲ではないこれを選曲。これはマーク・ボランが気に入った写真をヒプノシスに渡してジャケットを依頼、それを黒地に金でアレンジしたシンプルながら最大の効果で仕上げた。意外なタイトルと言えばレインボーの後期3作+コンピ1作やデフ・レパードのセカンドがある。
英詞Google翻訳

6. John Williams “Cavatina”(Theme from "The Deer Hunter")(1971)

ジョン・ウィリアムス「カヴァティーナ」
 
ヒプノシスの全仕事の中でも最も意表を突く一作。ギタリストのジョン・ウィリアムスは(ジュリアン・ブリームと並んで)現代クラシック・ギターの一つの完成系を確立したとともに、クラシック側からポピュラー市場に乗り込んだ先駆者でもあった。のちに映画のテーマ曲として知られるようになったこの曲の初出となったアルバム『チェンジス』のアルバム・デザインを手掛けたのがヒプノシス。仏像の手にも見えるそれはウィリアムス自身の手を赤外線フィルムで撮ったものを加工したものだ。余談ですが、意外な顔合わせとしてあのラベック姉妹(覚えてますか?)のアルバムを一枚手がけている。
John Williams
『Changes』

(Fly Records:1971)

7. The Pretty Things “Singapore Silk Torpedo”(1974)

ザ・プリティ・シングス「シンガポール・シルク・トーピード」
 
この曲は選者ではなくMLC側からの提案(別の曲を考えていました)。10ccやバッド・カンパニーなどの有名どころを差し置いてこれを選んだのはこれを機会に本作『シルク・トーピード』を知ってもらいたいと思ってセレクト(実際なかなかの拾い物!)。本作のジャケットはアルバム・タイトルを聞いた途端に第二次世界大戦期の戦闘機パイロットの験担ぎを連想した事からこうなったとのこと。
商品情報
ザ・プリティ・シングス
『シルク・トーピード』

CD(2006/4/26)¥3,076(紙ジャケット仕様)

8. UFO “Doctor Doctor”(1974)

UFO「ドクター・ドクター」

ヒプノシスの全ディスコグラフィを見るとピンク・フロイドとウィッシュボーン・アッシュ(オミットしたのは残念!)に次ぐ上客がクリサリス在籍期の大半を手がけたUFO。その初顔合わせとなった『現象』のジャケットは UFOの写真を偽造しようとする夫婦を写したもの。UFOに見えるものは車のホイールキャップ。よほどポーにとって思い出があるのか、「ヒプノシス全作品集」においてマイケル・シェンカーがいた頃の UFOのスタジオ盤全てに文を寄せている。中でも『宇宙征服』はお気に入りの一作とのこと。

9. Peter Gabriel “Solsbury Hill”(1977)

ピーター・ガブリエル「ソールズベリー・ヒル」

ジェネシスでの最後の作品となった『幻惑のブロードウェイ』をヒプノシスが手がけた事からか、ピーター・ガブリエルは最初の3枚のソロ・アルバム(全て特にタイトルがない)をヒプノシスに依頼。一見地味ながら味のあるジャケット写真は少し捻ったポートレート。(ポーによればピーターをランチャ・フラヴィアに乗せて)雨降りを演出。これが3枚目になると溶ける顔になるのだから(人によっては3枚目の「ビコ」でプレイリストを〆るかもしれない)。
商品情報
ピーター・ガブリエル
『Peter Gabriel』

Amazon Music・MP3(JAN 01 2009)¥1,900
CD(2010/9/28)輸入盤

10. Led Zeppelin “Achilles Last Stand”(1976)

レッド・ツェッペリン「アキレス最後の戦い」

レッド・ツェッペリンは数度ヒプノシスと組んでいますが、本作はジャケットのアイディアが浮かばなかった事からヒプノシスの起用に至ったという。創設者に並ぶ重要スタッフの一人ジョージ・ハーディが基本デザインを手懸けた(それをさらに歪にしたのはジミー・ペイジの意見を取り入れたという)オブジェが、一見何の変哲もない写真にとてつもない違和感を醸し出している。

─────────────

以上、正直言って10曲ではなかなかまとまらないです。ウィッシュボーン・アッシュ、10cc、バッド・カンパニー以外にも例えばポール・マッカートニー&ウィングスやブランドXなど、あるいはイエスやブラック・サバス、トッド・ラングレンなどの仕事を入れるべきかとも。それを言い出せば松任谷由実が(2枚も)あるし。

あと、全くの妄想ネタですが、ヒプノシスの仕事にジミ・ヘンドリックスの「エレクトリック・レディランド」とケイト・ブッシュの「天使と小悪魔」があったら果たしてどんなジャケットになっていたでしょうか?
ということで、松田さん今回は本当にどうもありがとうございました!……実はここまでにも紆余曲折ありまして。「ヒプノシス」は最初にご提案いただきながら「うーん、別なのありませんか?」と一旦却下(大変大変申し訳ありませんでした!)、その後別案をご提案いただきながら最終的な形になる前に例の本の発売が10月にあることがわかって「やっぱこっちでいきましょう!」と差し戻させていただく形に。本当、お忙しいところご協力いただきましてどうもありがとうございました!

本連載では一般の方からの投稿も受け付けております。まずはテーマとその10曲をこちらmailmagazine@musiclifeclub.com)までどしどしお送りください。追ってこちらから原稿発注いたします(でもノーギャラですよ)。どうぞお楽しみに!

そしてまた近々、MLCツイッター(@musiclife_club)でも近く次のテーマで公募しますので、見つけたらそちらは1曲単位でください。多数のご応募お待ちしております!
これまでの【MLCプレイリスト】

●第1回・MUSIC・2022.03.11
新企画【MLCプレイリスト】テーマ別に往年の名曲を集めて聴く新企画開始。初回テーマは “平和を我等に”! ロシアはウクライナ即時撤退を
●第2回・MUSIC・2022.04.21
【MLCプレイリスト】テーマ別に往年の名曲を集めて聴く連載企画・第2回、題して「ポイズン・アロウ」! 第2次ブリティッシュ・インヴェイジョンの胸キュン・ソングの矢がハートを貫いたまま!
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【MLCプレイリスト】テーマ別に往年の名曲を集めて聴く連載企画・第3回、題して「四月になれば彼女は」。原題カタカナ化もいいけど希少化する “邦題” を愛そう
●第4回・MUSIC・2022.06.22
【MLCプレイリスト】テーマ別に往年の名曲を集めて聴く連載企画・第4回は映画とサントラ! 80年代ムービー・ソング集、題して「愛は吐息のように」
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【MLCプレイリスト】テーマ別に往年の名曲を集めて聴く連載企画・第5回は80年代ガール・ポップ、題して「80'sロマンス」
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【MLCプレイリスト】本日8月12日は満月につきテーマは「月」。ツイッターで公募したみなさんの「月に吠える」16曲!
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2022.08.19
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