【追悼企画】『志村けんが愛したブラック・ミュージック』
 連載第8回・ザ・ブラザーズ・ジョンソン

写真提供:イザワオフィス

「【追悼企画】『志村けんが愛したブラック・ミュージック』レコード評原稿・再掲載」も、残すところあと3回。今回とりあげるのはザ・ブラザーズ・ジョンソンで、この連載第1回でピックアップしたプリンスと同じ、志村さんが『jam』のために一番最初に原稿をお書きになった号になります。

 

本連載は、70〜80年代にかつて弊社が刊行した音楽&カルチャー雑誌『jam』に掲載された、志村けんさんの手になるレコード評を再掲載するもの。今回のブラザーズ・ジョンソンのアルバム評は、これまで再掲載してきた中でも最もストレートな愛情表現がなされています。すべてお読みになってきた方も、今一度読み直してこちらで復習をどうぞ。

ザ・ブラザーズ・ジョンソンは、LA出身のジョージ(写真右・兄、1953年生まれ)とルイス(同左・弟、1955年生まれ/2015年、食道の出血により60歳で死去)のジョンソン兄弟によるユニット。二人ともがリード・ヴォーカルを取りつつ、主に兄ジョージはギターを、弟ルイスはベースを担当するマルチ・ミュージシャン。特にルイスの方は、今ではスラップという呼称の方がポピュラーな “チョッパー奏法” の名手として当時から知られ、セッション・ミュージシャンとしても引っ張りだこな存在でした。マイケル・ジャクソン、アレサ・フランクリン、ビリー・プレストンといったスターのレコーディングはもちろんのこと、「ウィ・アー・ザ・ワールド」にもクレジットされているのですが集合写真には写っていないようなので、クインシーの指揮の下オケの方でベースを弾いているのではないでしょうか。

グループは1976年の『ルック・アウト・フォー・No.1』でアルバム・デビュー、シングルの「I'll Be Good to You」(全米3位)や、翌年のアルバム『Right on Time』からのシングルカット「Strawberry Letter 23」(全米5位/シュギー・オーティスのカヴァー)が大ヒットして、一躍人気グループになっています。その後も順調に活動を続けていましたが、1982年の『ブラスト!』で一旦は解散。今回取り上げるアルバム『ライト・アップ・ザ・ナイト』は1980年リリースの4作目で、全米で5位、R&Bチャートでは1位を記録した作品です。ここから「ストンプ!」がシングルカットされ全米では7位を記録、日本でもヒットしディスコ・スタンダードとして今も愛され続けています。

【音楽雑誌『jam』】
『jam』は、1978〜1981年に弊社が刊行した音楽を中心としたカルチャー雑誌。『ミュージック・ライフ』『ロック・ショウ』と編集長を歴任した水上はる子氏が立ち上げ、ティーンを主な対象読者としたそれら2誌に対し、もう一段階上の年齢層、言わば “その2誌を卒業した読者” に向けたものでした。

【『jam』1980年4月号】
今回の原稿が掲載されたのは『jam』1980年4月号(編集長は高橋まゆみ氏)、表紙はゲイリー・ニューマン。何より目立つのはポール・マッカートニー逮捕の顛末。「日本滞在全記録」「余波」「英国人ライターの目に写った逮捕事件」の3段階に分け分析。この他スティングvs甲斐よしひろ対談、ホール&オーツやクリスティン・マクヴィー&スティーヴィー・ニックスのインタヴューなど。表紙/目次で時代背景も確認しつつ、志村さんの原稿をお読みになってください(タップ/クリックで拡大できます)。

『jam』1980年4月号
同号目次

◾️同号アルバム評ページ、その他の掲載作品(※太字は志村けんさん執筆分)
マッドネス『ワン・ステップ・ビヨンド』、ボビー・コールドウェル『ロマンティック・キャット』、ザ・ブラザーズ・ジョンソン『ライト・アップ・ザ・ナイト』、ダニー・コーチマー『危険な遊び』、インメイツ『ファースト・オフェンス』、ジルベルト・ジル『レアルシ(輝き)』、フォクシー『パーティ・ボーイズ』、シェリル・リン『イン・ラヴ』、ピーター・グリーン『虚空のギター』、林 子祥『YMCA好知己──Hit Pops中国語盤』、甲斐バンド『100万$ナイト(武道館ライヴ)』、シェール『地獄からの誘惑』、ユートピア『アドヴェンチャーズ・イン・ユートピア』、ザ・ナウ『恋のリアクション』、ザ・ツーリスト『リアリティ・エフェクト』、パブリック・イメージ・リミテッド『メタル・ボックス』、デイヴィッド・ゲイツ『もう一度』、プリテンダーズ『愛しのキッズ』、Various Artists『ビジネス・アンユージュアル(ZIGZAG誌編集)』、ダムド『マシンガン・エチケット』、プリンス『愛のペガサス』ミリー・ジャクソン『ミリー・ジャクソン・ライヴ』、リンダ・ロンシュタット『激愛』、リンダ・ルイス『109 ジャマイカ・ハイウェイ』、イエロー・マジック・オーケストラ『公的抑圧』、ロジャー・ヴドゥーリス『ロマンの囁き』

◾️執筆陣
近田春夫、志村けん、ピーター・バラカン、中村とうよう、糸井重里、湯川れい子、福田一郎、木崎義二、大伴良則、藤 吉郎、高橋まゆみ(jam編集長)

【プロフィール】志村けん(しむらけん)

東京都東村山市出身のコメディアン。1950年2月20日生まれ、A型。荒井 注脱退に伴いザ・ドリフターズに加入、間も無く『8時だヨ!全員集合』で「東村山音頭」「ヒゲダンス」などでお茶の間の人気は絶頂に。その後も「バカ殿様」「変なおじさん」といったキャラクターを生み出した。テレビでは『天才!志村どうぶつ園』にレギュラー出演していたが、2020年3月29日、新型コロナウイルスによる肺炎で他界された。享年70。

音楽、特にブラック・ミュージック、ディスコ・ミュージック好きとして当時から広く知られていたことから、弊社『jam』でアルバム評を執筆することに。「ヒゲダンス」のトラックはテディ・ペンダーグラス、「ドリフの早口言葉」はシュガーヒル・ギャング+ウィルソン・ピケットで、いずれも自身によるセレクトであるというエピソードが知られている。また中学時代は熱烈なビートルズ・ファンで、1966年の武道館公演を見に行った逸話を披露したりもしていた。

【追悼企画】志村けんがライターとして執筆した、80年代ブラック・ミュージックのアルバム・レヴュー再掲載

【第8回・ザ・ブラザーズ・ジョンソン『ライト・アップ・ザ・ナイト』】

The Brothers Johnson / Light Up The Night

US:The Brothers Johnson / Light Up The Night
(A&M Records/SP-3716)1980年発売
日本:ザ・ブラザーズ・ジョンソン『ライト・アップ・ザ・ナイト』
A&M(AMP-6073)1980年発売

Side A
1. Stomp!/ストンプ!(6:24)
2. Light Up The Night/ライト・アップ・ザ・ナイト(3:46)
3. You Make Me Wanna Wiggle/おまえにスリル(3:36)
4. Treasure/トレジャー(4:09)

Side B
5. This Had To Be/ディス・ハド・トゥ・ビー(5:13)
6. All About The Heaven/オール・アバウト・ヘヴン(3:59)
7. Smilin' On Ya/スマイリン・オン・ヤ(3:46)
8. Closer To The One That You Love/いつの日か君と(3:11)
9. Celebrations/セレブレイションズ(4:30)


身体を陽気にのせてくれる


 

ザ・ブラザーズ・ジョンソン『ライト・アップ・ザ・ナイト』A&M(AMP-6073)

 いつ聴いてもリズム・セクションのミキシングがしっかりしている。特にベース・テクニックのチョップ奏法が生かされていて、ベースの音が身体の底を揺さぶってくれる。「全員集合」で演っている “ヒゲ” の曲もベースが主体になっているので身体が動かしやすいのかもしれない。
 1面の “ストンプ” から “おまえにスリル” までとにかくごきげんなサウンドだ。ヴォーカルと管とストリングスがよくコーディネイトされていて迫力のあるものに仕上げてる。B面の “ディス・ハド・トゥー・ビー” は出だしから身体を陽気にのせてくれる。“スマイル・オン・ユー” は南国の香りを漂わせるペットのメロがなんともいえない。とにかく僕はこの手のものが好きで好きでたまらないのだ。
(志村けん)
 

Recorded at:Kendun Recorders, Allen Zentz Recording, A&M Studios
Mixed At:Kendun Recorders
Mastered at:A&M Studios
Mastered by:Bernie Grundman
Mixed, Recorded by:Bruce Swedien
Engineer[Assistant]:John Van Nest, Ralph Osborn, Randy Pipes, Tim Gerrity

Producer, Arranged By[Backing Vocals, Rhythm, Synthesizer], Backing Vocals:Quincy Jones
Arranged:[Backing Vocals, Rhythm, Synthesizer]Rod Temperton, [Horns, Strings]Jerry Hey, [Rhythm]The Brothers Johnson, [Synthesizer]Johnny Mandel

Art Direction: Chuck Beeson, Glen Wexler
Design Concept[Cover Concept]: Ed Eckstine, Glen Wexler
Illustration:Kurt Triffet
Photography:Glen Wexler
Directed:The Fitzgerald-Hartley Company

Backing Vocals, Lead Vocals, Rhythm Guitar, Lead Guitar:George Johnson
Backing Vocals, Bass, Guitar, Piano[Acoustic], Synthesizer[Prophet 5], Vocals – Louis Johnson

Lead Vocals:Alex Weir
Lead Vocals, Percussion:Richard Heath
Vocal Percussion, Percussion:Paulinho DaCosta
Drums:John Robinson
Electric Piano, Piano[Acoustic], Synthesizer:Greg Phillinganes
Flute, Baritone Saxophone, Soprano Saxophone, Tenor Saxophone:Kim Hutchcroft
Synthesizer, Flute, Alto Saxophone, Tenor Saxophone:Larry Williams
Euphonium, Trombone, Trumpet[Slide], Conductor[Strings]:Bill Reichenbach
Programmed By[Synthesizer], Synthesizer:Steve Porcaro
Flugelhorn, Trumpet:Gary Grant
Flugelhorn, French Horn, Trumpet:Jerry Hey
Horns[Performer]:The Seawind Horns
Backing Vocals:Alex Weir, Augie Johnson, Jim Gilstrap, Josie James, Merry Clayton, Michael Jackson, Richard Heath, Scherrie Payne, Susaye Greene-Brown, Valerie Johnson

John Robinson & Merry Clayton appear courtesy of MCA Records
Paulinho Da Costa appears courtesy of Pablo Records
Richard Heath & Alex Weir appear courtesy of Qwest Records
Steve Porcaro appears courtesy of CBS Records
Scherrie Payne & Susaye Greene-Brown appear courtesy of Motown Records
Augie Johnson appears courtesy of Fantasy Records
Michael Jackson appears courtesy of Epic Records

Written-By – Valerie Johnson, Louis Johnson, Rod Temperton, Louis Johnson , Greg Phillinganes

【プロフィール】

ザ・ブラザーズ・ジョンソン(The Brothers Johnson)

 

クインシー・ジョーンズの秘蔵っ子としてデビューした、ジョージ&ルイス・ジョンソン兄弟によるソウル/ファンク・ユニット。10代の頃からミュージシャンとして活躍し、ビリー・プレストンのバック・バンドからクインシー・ジョーンズのアルバム『メロウ・マッドネス』への参加を経て、クインシーのプロデュースで1976年にアルバム『ルック・アウト・フォー・No.1』でデビュー。これが全米9位のスマッシュ・ヒットを記録し、続く『ライト・オン・タイム』(’77年/全米13位)、『ブラム!!』(’78年/全米7位)、『ライト・アップ・ザ・ナイト』(’80年/全米5位)の大ヒットを記録。さらにシングルも「アイル・ビー・グッド・トゥ・ユー」(’76年/全米3位)、「ストロベリー・レター23」(’77年/全米5位)、「ライト・アップ・ザ・ナイト」(’80年/全米7位)等、メジャー・ヒットを連発した。また弟ルイスはベーシストとしてマイケル・ジャクソンの一連のメガ・ヒット・アルバムに参加し、その華麗なスラップ・ベース奏法でファンキーなグルーヴを生み出すことに大貢献したことでも知られる。

原稿中では “ヒゲ” のことも引き合いに出しつつ、ブラジョンに対する愛が迸っております。これまでの再掲載分ではしっとり歌い上げ系のスロー〜ミディアムに関する言及が多かったように思いますが、こういうアッパーなダンス・ナンバーは格別だったご様子。ストレートな物言いが非常に気持ちいいです。

ということで、今回もお読みくださりどうもありがとうございました。次回・第9回は9月11日(金)正午に公開いたします。どうぞ次回もお楽しみに!

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