【追悼企画】『志村けんが愛したブラック・ミュージック』最終回 ブッカー・T・ジョーンズ

志村けんさん写真(提供:イザワオフィス)

「【追悼企画】『志村けんが愛したブラック・ミュージック』レコード評原稿・再掲載」もいよいよ今回が最終回。いずれも短い原稿でしたが、その中にも志村さんのお人柄や、演者としての考え方のようなものが垣間みえていたように思います。しかしそれも今回が最後。本日取り上げるのはブッカー・T・ジョーンズの『ベスト・オブ・ユー』です。
 

この連載は、70〜80年代にかつて弊社が刊行した音楽&カルチャー雑誌『jam』に掲載された、志村けんさんによるレコード評原稿を再掲載しています。当時の志村さんはソウル/R&B/ディスコ的なものがお好きで、毎月のレヴュー欄でもそういったものばかりを担当なさっていたわけですが、といって作品単位ではまれにお気に召さなかったものもあったよう。今回のブッカー・T・ジョーンズ作品評もそういったものの一つで、期待が大きかったのかちょっと残念そうです。前回のダイアナ・ロス作品評と好対照な筆致ですが、そうしたところもお楽しみください。

【音楽雑誌『jam』】
『jam』は、1978〜1981年に弊社が刊行した音楽を中心としたカルチャー雑誌です。『ミュージック・ライフ』『ロック・ショウ』と編集長を歴任した水上はる子氏が立ち上げ、最後まで編集顧問として関わっていました。ティーンを主な対象読者としたそれら2誌に対し、もう一段階上の年齢層、言わば “その2誌を卒業した読者” に向けたものでした。

【『jam』1980年7月号】
今回の原稿が掲載されたのは『jam』1980年7月号(この号の編集長は高橋まゆみ氏)、表紙はプリテンダーズのクリッシー・ハインドで、本連載第5回のチャカ・カーン作品評が掲載されていたのもこの号でした。以下、表紙/目次でこの雑誌や当時の雰囲気を思い出しつつ、志村さんの原稿をお読みください(タップ/クリックで拡大できます)。

『jam』1980年7月号
同号目次

◾️同号アルバム評ページ、その他の掲載作品(※掲載順、太字は志村けんさん執筆分)
ディーヴォ『欲望心理学』、イエロー・マジック・オーケストラ『増殖』、ザ・ビーチ・ボーイズ『キーピン・ザ・サマー』、ザ・モーターズ『テナメント・ステップス』、チャカ・カーン『ノーティ(じゃじゃ馬馴らし)』、ポール・マッカートニー『ポール・マッカートニーII』、フラッシュ&ザ・パン『ブラック・スクリーン』、ハーマン・ブルード&ヒズ・ワイルド・ロマンス『ゴー・ナッツ』、エリック・クラプトン『ジャスト・ワン・ナイト/ライヴ・アット武道館』、シャネルズ『Mr. ブラック』、スティッフ・リトル・フィンガーズ『ノーバディーズ・ヒーローズ』、ルー・リード『都会育ち』、ブッカー・T・ジョーンズ『ベスト・オブ・ユー』、ジョニー・ルイス&チャー『トライスクル』、トニー・シュート『アイランド・ナイト』、ランディ・クロフォード『道標(みちしるべ)』、ブラッフォード『ブラッフォード・ライヴ』、カジノ・ミュージック『ジャングル・ラヴ』、リジー・メルシエ・デクルー『プレス・カラー』、テレンス・ボイラン『スージーに贈る』、テリー・デサリオ『ムーンライト・マッドネス』、ザ・サイケデリック・ファーズ『ザ・サイケデリック・ファーズ』、南 佳孝『モンタージュ』、レイチェル・スウィート『汚れなき憧れ』、ポール・デイヴィス『パステル・メッセージ』、Various Artists『シャープ・カッツ』

◾️執筆陣(掲載順)
近田春夫、高橋まゆみ(本誌編集長)、志村けん、ピーター・バラカン、中村とうよう、かまやつひろし、湯川れい子、木崎義二、江口寿史、仲邨沓一、藤 吉郎

【プロフィール】志村けん(しむらけん)

東京都東村山市出身のコメディアン。1950年2月20日生まれ、A型。荒井 注脱退に伴いザ・ドリフターズに加入、間も無く『8時だヨ!全員集合』で「東村山音頭」「ヒゲダンス」などでお茶の間の人気は絶頂に。その後も「バカ殿様」「変なおじさん」といったキャラクターを生み出した。テレビでは『天才!志村どうぶつ園』にレギュラー出演していたが、2020年3月29日、新型コロナウイルスによる肺炎で他界された。享年70。

音楽、特にブラック・ミュージック、ディスコ・ミュージック好きとして当時から広く知られていたことから、弊社『jam』でアルバム評を執筆することに。「ヒゲダンス」のトラックはテディ・ペンダーグラス、「ドリフの早口言葉」はシュガーヒル・ギャング+ウィルソン・ピケットで、いずれも自身によるセレクトであるというエピソードが知られている。また中学時代は熱烈なビートルズ・ファンで、1966年の武道館公演を見に行った逸話を披露したりもしていた。


【追悼企画】志村けんがライターとして執筆した、80年代ブラック・ミュージックのアルバム解説原稿再掲載

【最終回 ブッカー・T・ジョーンズ『ベスト・オブ・ユー』】

Booker T. Jones / The Best Of You

US:Booker T. Jones ‎/ The Best Of You 1980年発売
(A&M Records/SP-4798)

日本:ブッカー・T・ジョーンズ『ベスト・オブ・ユー』1980年発売
(A&M/アルファ/ビクター/AMP-6076


Side A
1. You Got Me Spinnin'/ユー・ゴット・ミー・スピニング(4:02)
2. The Best Of You/ベスト・オブ・ユー(5:18)
3. Cookie/クッキー(3:51)
4. Pride And Joy/プライド・アンド・ジョイ(4:43)

Side B
5. Down To The Wire/ふたりの夜(5:27)
6. Stand/スタンド(4:33)
7. We Could Stay Together/愛の語らい(4:54)
8. Will You Be The One/君こそ……(3:32)


僕の何処にもとまらずに流れてしまう


 

ブッカー・T・ジョーンズ『ベスト・オブ・ユー』1980年発売(A&M/アルファ/ビクター/AMP-6076)

レコード・メーカーの人オコッチャやあよ。とても優れたアルバムだと僕は思うのだが、けっして売れるアルバムではないからだ。このブッカーの曲を聴いていてそんな矛盾に気がついた。本格派指向にもミーハーにも僕はこだわらない。人の好みは人それぞれなのだからつまらぬ強制やへ理屈はこと音楽に関しては無用である。僕の場合は常にごった煮だ。一度受け入れるには受け入れるのだが、それが消化できるかどうかが問題なのである。ブッカーの場合僕はやや消化不良をおこしている。聴き終わった後今ひとつすっきりしないのだ。ブッカーの説得力あるソフト・ヴォイスによって一曲、一曲がものすごく甘美なものに仕上げられ、スロー・ナンバーはついうっとりと聴かされてしまう。ティー・タイムのBGMには最適かもしれないが、僕の中の何処にもとまらずに流れていってしまったのだ。
(志村けん)
 
Booker T. Jones
『The Best Of You』
Recorded : Sunset Sound
Mixed : Sunset Sound
Mastered : The Mastering Lab

Art Direction : Chuck Beeson
Design : Amy Nagasawa

Producer : Booker T. Jones, David Anderle
Arranged : Booker T. Jones
Co-producer : Ellen Vogt
Conducto[Strings & Horns]: Jules Chaikin
Recording : Peggy McCreary
Mixing : David Anderle, Peggy McCreary
Mastering : Mike Reese
Photography : Gary Heery

Guitar : Marlo Henderson, Michael Sembello
Bass : Dennis Belfield
Drums : James Gadson. Raymond Pounds
Keyboards : Booker T., Don Freeman, Mike Utley
Vocals : Donny Gerard, Luther Waters, Oren Waters, Rita Coolidge
Saxophone[Lead]: Richard Cannata

Written-By : Booker T. Jones, Booker T. Jones / Lenny Macaluso / Pat Summerson, Sylvester Stewart, Booker T. Jones / Mary Unobsky

Oren Waters and Luther Waters appear courtesy of Arista Records

【プロフィール】ブッカー・T・ジョーンズ(Booker T. Jones)
 

本名ブッカー・タリフェーロ・ジョーンズ・ジュニア、1944年11月12日、アメリカ合衆国テネシー州メンフィス生まれ。16歳の時からプロのミュージシャンとして、スタックスの前身サテライト・レコードで演奏。そしてスティーヴ・クロッパーらと1962年にブッカー・T&ザ・MG'sを結成。スタックスのハウスバンドとして、オーティス・レディングやサム&デイヴ、ウィルソン・ピケットなどをサポートし、同レーベルの黄金時代を支えた。

ソロとしては、1972年にアルバム『The Runaway』以後、妻プリシラ(リタ・クーリッジの姉)とのデュオを含めこれまでに13作品をリリース。最新作は2019年の『Note By Note』で、同作はソニーより国内盤も発売されている。

ウィキペディアより抜粋、編集・追記して構成。

そんなわけで、【追悼企画】『志村けんが愛したブラック・ミュージック』もここまで。全10回、最後までお付き合いいただきどうもありがとうございました。ぜひ今回の連載に関してのご感想をお寄せください。今後の参考にさせていただきます(記事下にコメント投稿欄がありますのでご利用ください)。

志村さんの他界からもう半年になりますが、今もそのお姿をテレビ画面でお見かけすることが多く、またここでこうして2週に一度原稿を読んでいたので、お亡くなりになったような気がしません。改めてご冥福をお祈りいたします。どうぞ、安らかにお休みください。

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